カブト虫に関して、今思い出しても不思議な思い出がある。
小学校4年か5年の夏のこと、近所の子供たちの広大な遊び場でもある時代劇の撮影で有名な大覚寺での出来事だ。その当時、僕ら近所の悪ガキは、境内の拝観料を出さなければ入れないところにも、壁を乗り越えたり、川を渡ったりしてよく侵入していた。坊さんに見つかると当然怒られるが、見つかってダッシュで逃げるのもおもしろかった。
その7月のある日も、グランドで野球をした後か何かで、境内に入って遊んでいた。八角形の形の宝物を入れてある建物(たぶんこの勅封心経殿と思われる)の床下は、風通しが良いようにコンクリート土台から約1mほどの高さの薄暗い空間があった。
そこで僕らは発見した。10匹以上のカブト虫のサナギがオス・メス取り混ぜて、コンクリートの上に転がっていたのだ。白っぽい黄土色で、下腹の部分が動いているものもいたし、丁度羽化して出てきたばかりの白い背中を見せているカブト虫までいた。
薄暗い床下にサナギが転がっている様子は、言葉にできないほど不思議な情景であった。だからこそ30年程経った今でも、このことを良く憶えている。
その建物の周りは、確かに何本か木が生えており、その中には樫の木や栗の木などがあったが、クヌギの木があったかどうかはわからない。地面は苔むしたようなところが多くて、あまりカブト虫がいるようなところには見えなかった。
僕らは、雰囲気に圧倒され、全部採って行こうとはどうして思われず、一人一匹ずつ大きそうなオスのサナギを持って帰った。
その年は、その後何度かそこへ取りに行ったが、行くとまた何匹かのサナギが無防備に転がっていた。次の年に期待して行ったが、もうそのようなことはなかった。その後は、中学生になってしまい虫取りに興味がなくなり、また境内に侵入することもしなくなった。
あのカブト虫のサナギはどこから来たのか?クヌギの木の根本や腐葉土の中に自分の身体に合わせた大きさの穴を作って、そこでサナギになるのが普通だと思うのだが。薄暗ければ、コンクリート上に出てきてサナギになるのだろうか?
近くの土の中にたくさん幼虫がいて、その場所が都合が良いのでサナギになっていたのか?それとも、お坊さんの一人がカブト虫を養殖していたのか?近くの子供に僕らがからかわれていたのか?
今思い出しても、大きな謎である。
*カブト虫の話の続き、ちょっと文体を変えてみました。
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